木暮栄一/the band apart

木暮栄一/the band apart

「90〜00年代から完全に市民権を得たドラムマシンのサウンド。
特にDAWの普及以降、生ドラムのチューニングをマシンライクにするという、
ある意味逆説的なアプローチがドラマーの間でも増えたように思う。

かく言う僕もそちら側の人間で、
近年ではロー・ピッチ/ミュート多めのチューニングに落ち着いているが、
ライブはともかくとして、レコーディングの場面で最も腐心するのが、ハイハットの処理だった。

頭に思い描くハットのような“抜け”が中々作れない。
かと言ってEQ・コンプetcで加工し過ぎてしまうと、
今度はドラム・セットとのバランスがおかしくなり、
「これなら最初から全部打ち込めば良いのでは…?」となってしまう。

古い知人でもある延命寺くんのハイハットを叩いたのは、
そんな日頃の悩みとは全く関係のない楽しいイベントがきっかけだったのだけど、
その縁で一度レコーディングで試させてもらう機会をいただき、
何の処理も施していないマイクに乗った実音を聴いた瞬間から「あ、これだ」となったのでありました。

シンバルに関わらず全ての楽器は、
結局のところ最終的に使い手の好みによって選ばれていくものだと思います。
そうした意味で、EMJのハイハットは2025年の僕の嗜好にぴたりとハマり、
今のところその座を譲る気配はありません。

ハンドメイドゆえに、世界でこれだけという個体性も渋いよね。
オーセンティックなサウンドとは真逆の個性に溢れているので、
そうしたベクトルが気になる天邪鬼気質の方や、
マシン・ミュージックが好きな方には大変おすすめであります。

-Profile

木暮栄一/the band apart

1978年 生まれ
The band apartのドラマー
個性の強いアンサンブルをまとめ上げる細やかなドラミングが特徴。
リズムパターンの引き出しが多く、ディスコライクな四つ打ち、
フュージョン風の16ビート、ラテンリズムなど幅広く叩きこなす。

3rdアルバムからはジャムブロック、カウベル、タンバリン、ヴィブラスラップなど
様々なパーカッションを導入し、バンドサウンドに新たな彩りを与えた。
高校生の頃一時期、親の仕事の都合でカナダに住んでいた。
そのこともあって英語が得意である。
絵が得意で、Tシャツ、CDジャケットのデザインや、DVDのブックレットでその腕を披露している。